異世界食堂 6

異世界食堂 6 (ヒーロー文庫)

■あらすじ
オムニバス形式のエピソード集としてお届けする待望の第6巻。時に森の中に、時に海岸に、時に廃墟に……その扉は現れる。猫の絵が描かれた樫の木の扉は、「こちらの世界」と「あちらの世界」をつないでいる。扉を開けて中へ入ると、そこは不思議な料理屋。「洋食のねこや」。「こちらの世界」では、どこにでもありそうだけど意外となくて、生活圏に一軒欲しい小粋な洋食屋として、創業五十年、オフィス街で働く人々の胃袋を満たし続けてきた。グルメの井之頭某が孤独にメンチカツを頬張っていそうな、高級すぎず安っぽくもなくイイあんばいの店内は、昼時ともなるとサラリーマンで溢れかえる。「あちらの世界」では、「異世界の料理が食べられる店」として、三十年ほど前から、王族が、魔術師が、エルフが、究極の味を求めて訪れるようになった。週に一度だけ現れる扉を開けてやってくるお客が求めるのは、垂涎の一品と、心の平穏。美味いだけではないその料理には、人々を虜にしてしまう、不思議な魔力が宿っている。誰が呼んだか「異世界食堂」。チリンチリン――。今日もまた、土曜日に扉の鈴が鳴る。

■感想
シリーズ6冊目。久しぶりの飯テロ小説、やはりこの小説を読んでお腹が空いてくるのはお約束。アニメ化に合わせての発売のせいかお気に入りのクロが消えてるのが残念。しかし店主の姪である早希が新キャラとして登場、種族は違えど戸惑うアレッタ相手に仲良くしようと優しく接するワッフルのエピソードにほんわかとした気持ちに。なんか餌付けしてるみたいだ(笑)
カルパッチョやアヒージョに惹かれつつも、個人的には炊き込みご飯が最強でした。今が旬の秋鮭と茸がメインの時点でもうお腹が炊き込みご飯の気分になりますとも。面倒くさいけど作ってみようかな。表紙的に今回で終わりのような気配がしてますが、ぜひ続いてほしい飯テロ小説です。

変人のサラダボウル

変人のサラダボウル (ガガガ文庫)

■あらすじ
異界の麒麟児、混迷の時代に笑顔をお届け!貧乏探偵、鏑矢惣助が尾行中に出逢ったのは、魔術を操る異世界の皇女サラだった。なし崩し的にサラとの同居生活を始める惣助だが、サラはあっという間に現代日本に馴染んでいく。一方、サラに続いて転移してきた女騎士リヴィアは、ホームレスに身をやつしながらも意外と楽しい日々を送る。前向きにたくましく生きる二人の異世界人の姿は、惣助のほか、鬼畜弁護士、別れさせ工作員、宗教家といったこの地に生きる変わり者達にも影響を与えていき――。平坂読×カントクコンビがこの時代に放つ、天下無双の群像喜劇、堂々登場!

■感想
シリーズ1冊目。異世界から亡命した皇女サラとなし崩し的に同居することになった探偵の惣助が主人公。サラの適応能力恐るべし。早いタイミングでこちらの世界に馴染んでいて、惣助とも良いコンビですっかり年の離れた兄妹のようでほんわか。惣助が常識者というか優しい性格なのもあるんだろうけど。
織田信長がサラとの世界の分岐点とは…、ちょくちょく挟んでくるコナンネタが地味に面白かった。ホームレス化したサラの従者・リヴィアのエピソードも傑作。風俗店で働かされそうになったり、宗教団体に誘われたりと目まぐるしい日々。ワイルドかつ天然で可愛いとかズルいですな。続きも楽しみなシリーズです。

長い夜の国と最後の舞踏会 1 ~ひとりぼっちの公爵令嬢と真夜中の精霊

長い夜の国と最後の舞踏会 1 ~ひとりぼっちの公爵令嬢と真夜中の精霊~ (オーバーラップノベルスf)

■あらすじ
深い森に閉ざされた国ファーシタル。その森を管理する精霊に仕えてきた公爵家の令嬢ディアは、幼い頃に家族を殺され、王家に保護されたのち第一王子リカルドと婚約する。しかし、彼が他に愛する女性を得たことで婚約は解消される。
円満な婚約解消に思えたが、ディアは知っていた。かねてより精霊との繋がりを危惧していた王家がこの婚約解消を機に、数日後の舞踏会で自身を手にかけることを。そして自分の家族を殺したのが王家だということも――。全てを失いひとりぼっちで生きてきたディアは、最後に奪い続けてきた者達への復讐を決意する。そんな彼女をずっと見ていたのは、美しく残忍な精霊ノイン。彼こそディアの一族が仕えてきた精霊で、ディアが殺される理由だった。気まぐれに現れるノインとともに、残されたわずかな日々を過ごすディアは、最後の舞踏会に向けて歩み始める――。

■感想
濃密な世界観でファンタジーの醍醐味を味わえる一冊。第一王子に婚約破棄され、数日後の舞踏会で暗殺されると知ったディア。精霊ノインの力を借りて復讐を果たすことに。もう少しで暗殺されるのに、ノインの手料理を楽しみにしているディアが微笑ましい。すれ違いから気持ちが通じ合った後の甘い雰囲気が堪らなく可愛いです。でも6歳で年上の男性から告白されても本気にしないのは仕方ないよ(笑)
ディアにだって意志がある、第一王子を始めとして皆都合の良いようにディアを解釈して利用しているのが最低。というひたすら第一王子がキモい…。最後の舞踏会でディアがどんな復讐をしてくれるのか楽しみです。

迷探偵の条件 1

迷探偵の条件 1 (MF文庫J)

■あらすじ
あなたは「運命の人」(はんにん)を捕まえられるのかしら?真丘家の男子は十八歳までに運命の女性に出会わなくてはならない。でないと、十八歳で必ず死ぬ。つまり本日、十七回目の誕生日を迎え俺・真丘陸にはあと一年の猶予しかないということである。しかし、その残念な運命を回避するには厄介な体質が俺にはあった。しかも二つ。一つは女難体質で、この中に運命の相手がいても困るレベルでヤンデレばかり引き寄せてしまうこと。
そしてもう一つは、超がつく探偵体質であること。それはもう、ちょっと出かけると事件に巻き込まれるような。というわけで、今日もまた死体に出くわしたのだが……。もしかして、犯人が運命の人ってことはないよな?

■感想
18歳までに運命の女性に出会わなければ死んでしまう、ヤンデレ女を引寄せてしまう上に探偵体質な真丘陸が主人公。日向夏先生ということで即買い。陸の周囲を固めるのは確かに癖のある女性ばかり。サクッと読めるという意味ではライトミステリとしても十分面白かったかと。今の段階では誰が陸の運命の相手か不明ですな。
個人的には最後のユキの豹変に驚きました、でも正に日向夏先生らしいキャラともいえる。これは陸死ねないよね。そして最大の疑問はなぜ表紙がまりあなんだろうか…、今後の布石といっていいのかな。占いアプリの文面が不吉だし、続きがある前提での終わり方でした。地味に茂部がカッコ良かった。

サイレント・ウィッチ II 沈黙の魔女の隠しごと

サイレント・ウィッチ II 沈黙の魔女の隠しごと (カドカワBOOKS)

■あらすじ
魔力測定&恩師の赴任――最強の魔女、正体バレの危機に思わず失神!?〈沈黙の魔女〉モニカは第二王子を狙う敵を極秘裏に“処理”。生徒会会計にも抜擢され、護衛任務は順調……かに思えた。しかし正体バレの危機が次々襲来!? かつての恩師が赴任してきたり、七賢人になるほどの魔力量なのに魔力測定に巻き込まれたり、普通の学園生活に最強の魔女は失神寸前!皆には簡単な社交ダンスやお茶会だって、モニカには精いっぱい。それなのに、第二王子にも次なる危機が迫り――?無詠唱の魔女の極秘任務、メンタルが試される第二幕!

■感想
シリーズ2冊目。第二王子の護衛として極秘で学生生活を送るモニカ。最強の魔女でありながらも人見知り故に問題だらけだったが、少しずつ友達も増えてきて学校に馴染んでいく。社交ダンスやお茶会など皆で協力しながらワイワイガヤガヤやっているのが青春っぽくていいですね。
そして第二王子の暗殺の危機を見事に救ったモニカさんカッコいいっす。ほろ苦い真相でしたが、モニカの頑張りで救われた部分もあってあの人の今後がどうか安らかでありますように。
最後のフェリクス視点の短編では沈黙の魔女が大好きな年相応の彼の姿を見れたのが新鮮でした。推しの存在に興奮するファンにしか見えない(笑)モニカの正体を知った時のフェリクスの反応が今から楽しみです。

霜月さんはモブが好き

霜月さんはモブが好き (GCN文庫)

■あらすじ
「あなただけが、特別なの」放課後、忘れ物を取りに学校に戻った中山幸太郎は、誰もいない教室で眠りこける霜月しほに遭遇する。クラスでハーレムを形成中のモテモテ男子・竜崎龍馬の大本命と噂の彼女だが、いつも無表情で笑ったところを見た者はいない。なのに今、その白い指が幸太郎の手を握って――⁉ヒロインとモブ男子の「秘密の関係」が始まる!

■感想
義理の妹・幼馴染・友人を主人公キャラの竜崎にとられてしまったモブ男子の幸太郎。ひょんなことから竜崎の本命であり幼馴染の霜月と友達になることに。モブから見たハーレム主人公、という設定がよく効いていて面白かった。自分に酔ったような終盤での竜崎の告白が本気で気色悪い。でも幸太郎が言いたいことを殆ど代弁してくれてスカッとしたし、見事なザマァ展開でした。モブ男子カッケー。
完璧な美少女かと思いきや意外とポンコツなしほの可愛らしさが絶大でした。義理の妹・梓も幸太郎への態度を反省して、竜崎のことを冷静に見た上で告白していて敢闘賞をあげたい気分。メイン二人の今後が気になるので続編希望です。

炎舞館の殺人

炎舞館の殺人 (新潮文庫)

■あらすじ
欠落を抱える者たちが陶芸で身を立てる山奥の函型の館。師匠が行方不明となり、弟子たちの間で後継者をめぐる確執が生じる。諍いが決定的になったとき、窯のなかでばらばら死体が発見された。奇怪なことに、なぜか胴体だけが持ち去られていた。炎の完全犯罪は何を必要とし、何を消したのか。過去の猟奇事件と残酷な宿命が絡み、美しく哀しい「罪と罰」が残される――。ラストの1行に慟哭が響く。「このように生きるしかなかった者たち」への著者の深い共感が、全編をつらぬく本格ミステリー。

■感想
今回の舞台は行方不明の陶芸家の弟子達が住む炎舞館。次々と起こる殺人事件で見つかるのはバラバラ死体、やっぱり王道的なやり方で読者を騙してきたなと。なぜ師匠は体に欠落を抱えた者を弟子にしたのか、それはトリックのキーポイントにもなっているし師匠の過去にも繋がっている。
断章で語られた辛い過去からして犯人はただ自分や大切な人の居場所を守りたかっただけなんだろうな。あらすじの通りラストの一行に心を鷲掴みにされた気分、その生き方に絶対共感はできないけれど。しずかの件は見事に騙されました、終盤でしっかりと真相を導き出してくれてひと安心です。