炎舞館の殺人

炎舞館の殺人 (新潮文庫)

■あらすじ
欠落を抱える者たちが陶芸で身を立てる山奥の函型の館。師匠が行方不明となり、弟子たちの間で後継者をめぐる確執が生じる。諍いが決定的になったとき、窯のなかでばらばら死体が発見された。奇怪なことに、なぜか胴体だけが持ち去られていた。炎の完全犯罪は何を必要とし、何を消したのか。過去の猟奇事件と残酷な宿命が絡み、美しく哀しい「罪と罰」が残される――。ラストの1行に慟哭が響く。「このように生きるしかなかった者たち」への著者の深い共感が、全編をつらぬく本格ミステリー。

■感想
今回の舞台は行方不明の陶芸家の弟子達が住む炎舞館。次々と起こる殺人事件で見つかるのはバラバラ死体、やっぱり王道的なやり方で読者を騙してきたなと。なぜ師匠は体に欠落を抱えた者を弟子にしたのか、それはトリックのキーポイントにもなっているし師匠の過去にも繋がっている。
断章で語られた辛い過去からして犯人はただ自分や大切な人の居場所を守りたかっただけなんだろうな。あらすじの通りラストの一行に心を鷲掴みにされた気分、その生き方に絶対共感はできないけれど。しずかの件は見事に騙されました、終盤でしっかりと真相を導き出してくれてひと安心です。