血翼王亡命譚(3) ガラドの夜明け(★★★★★)

女王メルトラと猫の長官ディナンの策略によって引き起こされた争いは、亡命者の運命を飲み込んでいく。偶然にも白三日月の国の要人警護を請け負ったユウファ達。赤燕の国の刺客が彼らを襲い、両国を巡る戦火の火ぶたは突如切って落とされた。積み上がる死体と仲間達の負傷。さらにはイルナが秘血と呼ばれる軍事機密に関わったことで、囚われの身となってしまう。イルナを救うため、戦争を止めるため、メルトラとの因縁に決着をつけるため。満身創痍となりながら手に赤き焔の刃を握り、ユウファは己の宿命と向かい合う。そして赤刀に眠るアルナが目覚める時、二人の切なる想いと共にすべての因果が巡りだす―。
正に感涙、今年読んだラノベの中で一番感動しました。赤燕の国と白三日月の国の対立、そして両者に絡んでこようとする執念深い猫の一族。正直に言って白三日月の国は巻き込まれただけで被害者といえる立場なんですよね。なのでユウファ達の活躍によって丸く収まって良かったです。思いの外ガタリが頑張っていました。彼のこれからの活躍が赤燕の国の再興の鍵の一つになるでしょう。
そして遂にアルナの母・メルトラと対峙するユウファ。彼女のことを完全に悪者扱いしてましたが、彼女は彼女なりに国のことをきちんと考えていたんだなと。アルナを拒絶していたのは許せないけど、少しでも後悔している部分はあるようで赤燕の国の再興に力を注いでほしい。
ユウファとアルナの再会シーンには思わず泣いてしまいました…。二人の本音のぶつかり合いが本当に切なくて胸が張り裂けそうでした。一緒に生きることは出来ない、それでも再び巡り会う為に二人は違う時をそれぞれ生きていく。最後のあとがきの「あいしてる」はジーンときた。ユウファにとっての一番はきっとアルナだろうけど、イルナと共に生きていく以上彼女にもいつか恋愛感情が芽生えてくれるといいな。本当に美しい物語でした。