魔獣調教師ツカイ・J・マクラウドの事 件録 獣の王はかく語りき(★★★★☆)

“魔獣”―その身体に“人”に酷似した部分を持つ獣が存在する世界。人々が鑑賞・性愛の目的で雌型の魔獣を嗜好、盲愛して狂気に堕ち、世間には様々な事件が充ち満ちていた。帝都最高の魔獣調教師『絢爛なる万華鏡』ゴヴァン卿。その不可解な死とともに彼の全てを継承した青年―ツカイ。とある“魔獣愛好倶楽部”でツカイの友人となった上代ウヅキは、帝都最高峰の魔獣調教師“獣の王”として名声を高めていく彼に纏わる 魔獣絡みの事件に遭遇していき…というお話。
「獣の王」と称されるツカイとその友人・ウヅキが遭遇する魔獣にまつわるダークファンタジー。著者らしい重厚な世界観、そして予想通りグロい描写が多目でしたがしっかりと堪能しました。どのお話も何かしらの形でツカイが関わっていて、さすが「獣の王」と称されるだけあって策略の完成度もピカイチ。 現実にいたら絶対に関わりたくないタイプの人間です(笑)
滅多に自分の感情を乱さないツカイですが、後半でたった一人の女性に対してだけは少なからず感情を揺れ動かす描写があります。メイドの正体については予想通り、ツカイが何度も模索して彼女の感情を取り戻そうとしている様子を考えると切ない。「運命の敵も、親愛なる友も、私にとっては同じことだ」とツカイは言っていますが、ならばツカイを倒す敵はウヅキであってほしいなと思います。彼ならば最良の形でツカイを倒してくれると信じています。続きがあるならぜひ読みたいです。