小説の神様(★★★★☆)

小説の神様 (講談社タイガ)

小説の神様 (講談社タイガ)

僕は小説の主人公になり得ない人間だ。学生で作家デビューしたものの、発表した作品は酷評され売り上げも振るわない…。物語を紡ぐ意味を見失った僕の前に現れた、同い年の人気作家・小余綾詩凪。二人で小説を合作するうち、僕は彼女の秘密に気がついて…というお話。
自分が書きたいと思う小説が売れるわけではない、読者が読みたいと思った小説が売れる。そんな壁にぶつかり、小説家として道に迷っている少年が主人公。小余綾の言葉によって立ち直ったと思ったら、自分の小説が売れないという現実に悩んで再び落ち込んでしまう。浮き沈みが激しくて、とにかくネガティブ。でもそれは千谷が辛い現実ときちんと向き合ってる証拠でもある、もがき苦しみながらも最後の結論にたどり着いた時は心の底からホッとしました。
後半では小余綾が抱える心の傷について明かされます。気丈にふるまってはいたけど彼女も千谷と同じく苦しみながらも前に進もうとしていたんですね。
千谷を支える周囲の人達が魅力的。編集者の河埜さんや妹の雛子はもちろんのこと、なんといっても千谷の親友である九ノ里がかっこよかった。千谷が落ち込んだ時に「俺は、お前が屑だとは思わない。退屈だとも、空っぽだとも、日陰だとも思わない。お前は凄い奴だよ、一也。お前は、それを当たり前のようにできるから、気付けないんだろう。けれどお前は、俺たちでは決してできないことができてしまえる人間なんだ」にはキュンときた!