死体埋め部の回想と再興(★★★★☆)

死体埋め部の回想と再興 (ポルタ文庫)

死体埋め部の回想と再興 (ポルタ文庫)

■あらすじ
正当防衛で相手を殺してしまったところを同じ大学の先輩だという織賀に目撃された祝部。秘密裡に死体の処理を請け負う『死体埋め部』の部長(ただし部員は織賀のみ)を自称する織賀に窮地から救ってはもらったものの、祝部は強制的に二人目の部員として、織賀待望の後輩になる羽目に。織賀が運ぶ“奇妙な死体"がなぜそんな風に死んだのか、推理をさせられながら、祝部は織賀とともに死体を埋めるため、織賀の愛車のジャガーで山に向かう─。在りし日の織賀と祝部の物語のほか、“あのあと、もしも、そうなら"という、分岐した未来をそれぞれ描いた二編も含めた青春の補遺集。

■感想
補完的な意味合いが強いシリーズ2冊目。二人が平常運転で部活動していた時のお話とあの決定的な別れの後の分岐二編が収録。推理部分も面白いけどやっぱり個人的には祝部と織賀の関係に焦点をあてながら読了。死体埋めでやろうとしていることは重いのにオリガマウンテンに行くまでの二人の軽快な会話が好き。
織賀に出会った瞬間から祝部には織賀がいないと駄目なんだなと「不在」を読んで実感した。祝部が痛々しくて幽霊みたいになっとる。それに比べて「再会」では生き生きしてるよー。私は脳内で勝手に再会エンドで幕引きしたいと思います。

罪の名前(★★★★☆)

罪の名前

罪の名前

■あらすじ
日向には秘密がある。それは、口の中で生き物の蠢きを感じるのをが楽しくてやめられないこと。誰からも気味悪がられるその秘密を唯一守ってくれるのが、幼馴染の隼人だった。思いがけず、隼人が同級生に嫌がらせをされていることを知った日向は、ついにある行動に出るが(虫食い)。人間の本性を炙り出す傑作短編集。

■感想
短編集。どのお話もハッピーエンドとは程遠い不吉な余韻を残すラストで締めくくられている。嘘をつく患者に踊らされる医者、弟に恋をしてしまった不器用な兄の最期、呼吸をするように嘘で自分を塗り固める女友達。語り手が畏怖を感じる対象はどれも一般的な常識から逸脱した者ばかり。でも弟を愛してもがき苦しむ兄がいたたまれなくていっそのこと弟に手紙の真相をぶちまけても良かったのに、とさえ思った。
特に印象に残ったのは「虫食い」。思わず口の中の感触が気色悪くなるような描写はさすが。最後の隼人の「どうしてなんだろうな」という言葉が胸に響いた。その癖さえなければ隼人と日向はきっと一歩進んだ関係になってもおかしくないのに。たまにはこういう心が引き摺られるようなお話もいいな。

夢見る男子は現実主義者 2(★★★★☆)

■あらすじ
距離を置こうとする渉と、渉の変貌ぶりに戸惑いを隠せない愛華。これまでと違う微妙な距離感にモヤモヤが頂点に達した愛華は「―興味があるならっ…う、家に来なさいよ!!」と、まさかの爆弾発言を投下。片思い(?)相手の家に単独でお呼ばれする特大イベントで、二人の距離は一体どうなる?さらに、体調を崩して普段見せない内心を覗かせる渉の様子に、愛華がドキマギする一幕も―?web発大人気青春ストーリー、書き下ろしの激甘エピソードも加えた待望の第2弾!

■感想
シリーズ2冊目。表紙の芦田が恋愛バトルに参戦かと思いきやあくまで愛華達のサポート役でした。自分の家に呼ぶだけでこんなに葛藤する愛華がじれったくてそれがこの小説の醍醐味なんだなと。愛莉が無邪気で正に癒しでした。熱が出た時の渉のギャップは確かにグッとくる、姉貴には甘えているのもいいですね。
そしてイケメン・佐々木はフラれるフラグがビシビシと伝わってくる。最後のあーんで見せつけられたら心折れるよ。二人の関係はもちろん笹木さんという新キャラがどう動くのか、風紀委員・生徒会問題も気になる。次回に期待。

たとえばラストダンジョン前の村の少年が序盤の街で暮らすような物語10 (★★★★☆)

■あらすじ
栄軍祭での活躍をきっかけに、真の実力が多くの人に知られることとなったロイド。そんな彼を卒業後になんとしてでも引き入れたい王国各部門のお偉いさんたちは、早くも熱烈なスカウトに走り出し―「僕、全力で全部試してみます!」前代未聞の学年繰り上げインターン制度実施で、ロイドの有能ぶりが王国全土に広がっていく!そんな中、王国に謎の呪いが蔓延。ロイドの身近な人も危機に陥る。その影で糸を引くソウの悪意に、ロイドはかつてない苦戦を強いられる!「さあ本気で来てくれ。ロイド君」思い込む力こそ英雄の証。勘違いだから強くなれる、無自覚最強少年の勇気と飛躍な第10弾!!

■感想
シリーズ10冊目。進路希望調査によって将来の夢に悩むロイド、インターンを利用して決めようとするが各部門でロイド争奪戦が行われることに。その裏ではソウの野望が着々と実現していく。ショウマに必要だったのは既にロイドが得ていた仲間の存在、彼にもいつかかけがえのない仲間を作ってほしい。
そしてソウとアルカの会話は姉弟のようでもあり、親子のようでもある。「反抗期は終わったか、ソウ」がすごく好き。ロイドの決めた道は彼らしくて向いていると思う。遂にアルカに気づかれた暗躍中のイヴや国王がマリーの好意をロイドに伝えたところも気になる。

ヴァンパイア探偵2 戦慄の血塗られし狩人(★★★★☆)

■あらすじ
紅森市で凄惨な連続殺人事件が発生。被害者は皆、木の枝に吊され頸動脈を切られていた。奇妙にも被害者の血を回収している犯人を紅森署では“狩人”と呼び、捜査を進める。次第に、被害者たちは“経済的に困っていた”という共通点が浮かび上がり―!?一方、犯行現場で黒いコートを着た長身の男が地面に棒を刺していたという目撃情報が。同時に、行方不明だった静也の父を見たという証言があり、静也は父が事件に関与しているのではと直感する。“狩人”の正体は何者か?血を集める目的は何なのか?幼なじみコンビの科学ミステリー、第二弾となる長編!

■感想
シリーズ2冊目。木の枝に吊るされて頸動脈を切られるという連続殺人事件が発生、遊馬は犯人の正体を突き止めていく。事件の裏で不可解な行動をする静也の父親、始終淡々としていてキャラが掴めなかった。何故紅森市では凄惨な事件が多いのか、今回の犯人もその謎に振り回された被害者ともいえる。静也の父親がその謎を解いてくれるのか。
新たに「血の盟約」という厄介な設定も出てきましたが、遊馬がタフなだけあってすんなり受け入れて友情を深めているのが凄い。仕事では遊馬が静也に助けられることが多いけど、こういう精神的な部分では静也の方が助けられているんだろうな。早く続きが読みたいです。

たとえば俺が、チャンピオンから王女のヒモにジョブチェンジしたとして。(★★★★☆)

■あらすじ
生まれ持った“職業”によって人生が決められてしまう世界。コロッセオにて最強のチャンピオンながら“無職”ゆえに蔑まれ疲弊していたフウタは、自ら八百長計画に乗って追放される。その後、放浪の果てに王女ライラックと出会ったフウタは、何故か決闘を申し込まれ―その特殊な戦闘スタイルによる圧倒的な実力を見込まれ、食客=ヒモとして招待される事に!?「胸を張り己を誇りなさい。貴方の価値を私が見込みました」何不自由ない生活を送りながら、有事には元チャンピオンとしての傑出した剣の才覚を発揮していく!理不尽に蔑まれた最強の“無職”が、遂に報われる人生逆転ファンタジー、開幕!!

■感想
生まれ持った職業によって人生が決められてしまう世界で「無職」故に差別を受けてきたフウタが主人公。コロッセオで優勝してもこの扱いでは心が折れても仕方ない。だからこそフウタはライラックと出会えて本当に良かった。ライラックに認められたことでフウタもどんどん色々なことに積極的になっていき魅力的なキャラになります。
個人的にはメイドのコローナのキャラが強烈でした、喋り方が独特ですね。ライラックの心の悲鳴にフウタが寄り添うことで、彼女が思い描く世界の実現に一歩近付いたのでしょう。無職はただ単にこの世界が定義する枠に当てはまらないだけでフウタのように新たな可能性を秘めた場合もあるのかな。

蟲愛づる姫君の純潔(★★★★☆)

■あらすじ
魁国の若き王・楊鍠牙と、毒蟲好きの妃・李玲琳。完全なる政略結婚から始まったこの婚姻関係は、当人たちにしか分からない謎の絆で、どうやらうまくいっているようだ。ある日、王宮に衝撃の報告がもたらされる。旅先で死んだはずの鍠牙の妹・累姫が突如帰還したというのだ。しかし心身ともに深く傷ついた累姫は、どんな医師の治療も受け入れない。万策尽きた臣下たちは玲琳に姫の問診を願い出る。ところが兄である鍠牙は玲琳が妹に接することを快く思っていない様子で…?変わり者王妃と不幸体質国王の、最高に“変”な夫婦物語、風雲急を告げる第4弾!!

■感想
シリーズ4冊目。旅先で死んだはずの鍠牙の妹・累姫が帰還した。癇癪持ちで扱いづらい彼女が抱えた闇が根深くて、夕蓮という女の恐ろしさを改めて実感した。せめてこれからは安らかに暮らしてほしい。鍠牙の玲琳への執着っぷりがどんどん酷くなっているのが何ともいえない。玲琳に構ってもらえなくて暴走気味の里里が新鮮で可愛かったです。
玲琳がきっぱりと拒否した蟲師の一族とは今後どうなるのだろうか。外伝を読むと夕蓮にとっての先王は鍠牙にとっての玲琳に通じるものがあって、先王が亡くなったことで夕蓮の中のストッパーが外されてしまったんだろうな。