王女殿下はお怒りのようです 4.交錯する記憶(★★★★☆)

王女殿下はお怒りのようです 4.交錯する記憶 (オーバーラップ文庫)
■あらすじ
屋敷を襲った謎の青年と黒い霧の関連を知るため、レティシエルはジークと王立図書館へ向かう。秘書庫を訪れ、ついに黒い霧との関係がある力の正体に近づいたかと思った矢先、レティシエルは不可解なメッセージを発見し……?なかなか答えにたどり着けない中、レティシエルの元に、公爵家の領地内で発生した暴動の報せが届く。その中心がニコルの故郷近くと知ったレティシエルは、原因である公爵家の圧政を終わらせ、暴動を収束させるべく領地へ赴いた。そこに現れたのは公爵家の長男・フリード。黒い霧を操り、民草を道具と切り捨て蔑ろにするフリードを、王女殿下が断罪する――!

■感想
シリーズ4冊目にして第一部完結。屋敷を襲った謎の青年や黒い霧、そしてレティシエルとドロッセルの境遇など解明されていない伏線が盛り沢山な上に国名も沢山出てきたのでそろそろ整理しないとついていけなくなるかも。
公爵家で起きた暴動がきっかけでクリスタとの距離は少し近づいた様子。「私は私の正義、あなたはあなたの正義を貫いた」が格好良かったですね。
そして第一王女アレクシアの存在もキーポイント、結局のところ誰が犯人なのか明かされず。クリスタのことを可愛がってるとはいえサリーニャは卑怯な奴にしか思えないんだが…。精霊との取引にはきっと応じるのかな?次回はジークの活躍ももう少しほしいところ。

平安後宮の薄紅姫 物語愛でる女房と晴明の孫(★★★★☆)

平安後宮の薄紅姫 物語愛でる女房と晴明の孫 (富士見L文庫)
■あらすじ
「平穏に読書したいだけなのに!」読書中毒の女房が宮廷の怪異と謎に挑む。怪異や難事件の最後の駆け込み寺・薄紅の姫。彼女に依頼が成立するのは、物語にまつわる品が差し出されたときだけ。薄紅は重度の物語中毒で、特に『源氏物語』には目がないというのだ。――この異名が広がったのは、晴明の孫である若き陰陽師・奉親のせい。訪ねて来た彼に早く帰ってほしい一心で、物語知識を駆使し怪異の謎を解いたのが悪かった。薄紅を使えると判断した奉親は、言葉巧みにたびたび彼女をモノで釣っては謎解きにかり出すことに。「また相談ですか? 私は読書に集中したいのでございます!」

■感想
源氏物語大好きな女房・薄紅と安倍晴明の孫・奉親のコンビでおくる源氏物語になぞらえたライトミステリ。薄紅の源氏物語への熱が凄くて、大学では日本文学科だったので共感できる部分が多かった。菅侍従と薄紅との2つの顔を持ちながら好きなことにも没頭できる彼女は個人的に現代でいう理想的なキャリアウーマンのように思えた、羨ましい。
お気に入りは第三章、普段はクールな奉親があんな風にしみじみと大切な人を語る展開はずるいですよ。続きがあるなら二人が兄弟っぽく会話してる場面とか読んでニヤニヤしたい。薄紅と奉親のコンビはもちろんのこと前作品の為頼と光栄コンビの続きも読みたくなった。

仙文閣の稀書目録(★★★★☆)

仙文閣の稀書目録 (角川文庫)
■あらすじ
命より大切な本を守りたい少女とツンデレ司書青年の新感覚中華ファンタジー巨大書庫・仙文閣(せんぶんかく)。そこに干渉した王朝は程なく滅びるという伝説の場所。帝国・春(しゅん)の少女、文杏(ぶんきょう)は、一冊の本をそこに届けるべく必死だった。危険思想の持主として粛清された恩師が遺した、唯一の書物。けれど仙文閣の典書(司書)だという黒髪碧眼の青年・徐麗考(じょれいこう)に、蔵書になったとしても、本が永遠に残るわけではないと言われ、心配のあまり仙文閣に住み込むことに……。少女小説の手練、三川みりが贈る、命がけで本を護る少女と天才司書青年の新感覚中華ファンタジー!

■感想
大切な師が遺した書物を守る為に主人公・文杏が巨大書庫・仙文閣で自分の気持ちと向き合いながら答えを見つけていく中華ファンタジー。文杏と柳睿が理想的な師弟関係だっただけに醜い裏切りと文杏を追い詰める王朝側の理不尽さが酷い。
書を愛する者にとっては聖地ともいえる仙文閣だが、だからといって全ての書物を永久に保存出来るわけではない。文杏は仙文閣を見てまわる内にその意味を知っていく。柳睿の書を守り抜いた場面はスカッとしました。無愛想だけど書に対する誠実さが深い麗考、彼ならきっと文杏の良い師となってくれるでしょう。仙文閣にぜひ行ってみたい。

オーバーライト ――ブリストルのゴースト (★★★★☆)

オーバーライト――ブリストルのゴースト (電撃文庫)
■感想
グラフィティ。それは俺と彼女の想いすら鮮やかに上書く、儚い絵の魔法―。ブリストルに留学中の大学生ヨシは、ある日バイト先の店頭に落書きを発見する。普段は気怠げ、だけど絵には詳しい同僚のブーディシアと犯人を捜索するうちに、グラフィティをめぐる街の騒動に巻き込まれることに…。

■感想
グラフィティに誇りを持った人々の物語。個人的には公共物に落書きする不貞な輩というイメージしかなくて、しかしこの物語のキャラはきちんとプライドや誇りを持って描いていて印象が変わりました。特にグラフィティ集団のリーダーでもあるララは情熱的な一面もありながら理性的な一面も持ち合わせていて市議会との対立の際は本当に格好良かった。
ヒロイン・ブーディシアはなぜ描かなくなったのか。彼女のその理由に触れた時歯痒い思いを感じた。そしてこれはブーと主人公・ヨシの再起の物語でもあるのだと思う。実際の事件を基盤にしているそうでグラフィティと共存する町・ブリストルに行ってみたくなった。

この素晴らしい世界に祝福を!17 この冒険者たちに祝福を!(★★★★★)

この素晴らしい世界に祝福を!17 この冒険者たちに祝福を! (角川スニーカー文庫)
■あらすじ
「何の力も無かった最弱職の少年がたった一人で魔王を倒す。……そっちの方が格好良いじゃないですか!」大量のマナタイトを使用し、めぐみんの爆裂魔法で魔王城の結界を破ったカズマ一行。アクア達とも合流し、目的を果たしたとばかりに引き返そうする面々に対してカズマは――「魔王に掛かった賞金って、いくらぐらいなんだろうな?」根性なしのニートは、遂に魔王との最終決戦へ挑む!! カズマ・アクア・めぐみんダクネス―――アクセルが誇る問題児が愉快な仲間と共に魔王城に集結!! 国民的人気の異世界コメディ「このすば」、堂々完結!

■感想
17巻にして遂に完結。最後の締めくくりも「このすば」らしくて正に大団円でした。初端からめぐみんの暴走しててウケた(笑)魔王との戦いで姑息な手を使うのはいつものカズマらしいけど最後はかっこよく自爆してからのアクアの涙でずるい展開だよなと。いつもはギャグ要員のアクアがめずらしくヒロインしてたのが新鮮でした。
エリスが好きなのできちんとストーリーに絡んできてくれて良かった。色々と伏線も残したままなのでスピンオフを期待してしまいます。ダクネスもアイリスもカズマに片思いしたままだし本当にハーレムでいいんじゃなかろうか。カズマ達の冒険はまだまだ続く…!、そんなナレーションが聞こえてきそうなラストでした。

月50万もらっても生き甲斐のない隣のお姉さんに30万で雇われて「おかえり」って言うお仕事が楽しい 1(★★★★☆)

月50万もらっても生き甲斐のない隣のお姉さんに30万で雇われて「おかえり」って言うお仕事が楽しい 1 (オーバーラップ文庫)
■あらすじ
社畜の松友裕二(まつともゆうじ)が残業から帰ると、隣に住むOLの早乙女ミオ(さおとめみお)が家の鍵をなくして立ち尽くしていた。雨でずぶ濡れのミオが不憫になった松友はベランダからミオの家に入り、玄関を開けて言う――「おかえりなさい。今日は大変でしたね」そんな何気ない「おかえり」が心に刺さったミオに、松友は衝撃の提案を受ける「私の月収は五十万です。月に三十万円であなたを雇います」実は生活力ゼロで極度の人間不信だったミオと、彼女の身の回りの世話をする仕事を引き受けた松友。
ゆっくりと距離を縮めていく二人の間にあるのは単なる雇用関係かそれとも――。
孤独なお隣さんとのアットホームラブコメディ。

■感想
お隣さんとイチャイチャしているのがメインかと思いきや、イチャイチャもありながらヒロイン・ミオの心の闇を裕二が寄り添いながら癒していくお話でもあって良いラブコメでした。脇を固める元同僚の土屋や後輩の村崎も良い奴で特にUNOのエピソードが面白かった。
裕二の会社の社畜っぷりが酷すぎて最後の展開にはスカッとしましたとも。ミオの精神的な支えでもあった「あーちゃん」、「おかえり」のたった一言が一人暮らしの人にとってどれだけ心に染みるのかが分かるお話でした。松友と出会ったことによってミオの世界が広がってくれて何より。

スパイ教室02 《愛娘》のグレーテ(★★★★☆)

スパイ教室02 《愛娘》のグレーテ (ファンタジア文庫)
■あらすじ
『灯』最強のメンバーを選抜!? 最高のチームを結成せよ!不可能任務を見事達成した新生スパイチーム『灯』。次のミッションは冷酷無惨の暗殺者《屍》の殺害。より過酷な任務に、クラウスは現時点における『灯』最強メンバーを選抜することになり――。

■感想
シリーズ2冊目。今回のミッションは暗殺者「屍」の殺害、そして「愛娘」ことグレーテの活躍がメインでした。彼女の過去やクラウスへの恋心など前回と違ってストーリーに大きな仕掛けはなかったものの相変わらずの面白さでした。グレーテの秘密を知った上でクラウスは彼女を「美しい」と評し、グレーテはクラウスに恋をした。クラウスの返答は予想通りでしたが、彼が仲間を大切に思っていることは確かなので誠実な答えだったと思います。
ジビアの真っ直ぐな気性やリリィ・サラの穏やかさも相まって良いチーム編成だったかと。特にジビアがいなくてはウーヴェの信頼は勝ち取れなかっただろうし。最後のいきなりの展開についていけない、早く続きが読みたいです。