仙文閣の稀書目録(★★★★☆)

仙文閣の稀書目録 (角川文庫)
■あらすじ
命より大切な本を守りたい少女とツンデレ司書青年の新感覚中華ファンタジー巨大書庫・仙文閣(せんぶんかく)。そこに干渉した王朝は程なく滅びるという伝説の場所。帝国・春(しゅん)の少女、文杏(ぶんきょう)は、一冊の本をそこに届けるべく必死だった。危険思想の持主として粛清された恩師が遺した、唯一の書物。けれど仙文閣の典書(司書)だという黒髪碧眼の青年・徐麗考(じょれいこう)に、蔵書になったとしても、本が永遠に残るわけではないと言われ、心配のあまり仙文閣に住み込むことに……。少女小説の手練、三川みりが贈る、命がけで本を護る少女と天才司書青年の新感覚中華ファンタジー!

■感想
大切な師が遺した書物を守る為に主人公・文杏が巨大書庫・仙文閣で自分の気持ちと向き合いながら答えを見つけていく中華ファンタジー。文杏と柳睿が理想的な師弟関係だっただけに醜い裏切りと文杏を追い詰める王朝側の理不尽さが酷い。
書を愛する者にとっては聖地ともいえる仙文閣だが、だからといって全ての書物を永久に保存出来るわけではない。文杏は仙文閣を見てまわる内にその意味を知っていく。柳睿の書を守り抜いた場面はスカッとしました。無愛想だけど書に対する誠実さが深い麗考、彼ならきっと文杏の良い師となってくれるでしょう。仙文閣にぜひ行ってみたい。

オーバーライト ――ブリストルのゴースト (★★★★☆)

オーバーライト――ブリストルのゴースト (電撃文庫)
■感想
グラフィティ。それは俺と彼女の想いすら鮮やかに上書く、儚い絵の魔法―。ブリストルに留学中の大学生ヨシは、ある日バイト先の店頭に落書きを発見する。普段は気怠げ、だけど絵には詳しい同僚のブーディシアと犯人を捜索するうちに、グラフィティをめぐる街の騒動に巻き込まれることに…。

■感想
グラフィティに誇りを持った人々の物語。個人的には公共物に落書きする不貞な輩というイメージしかなくて、しかしこの物語のキャラはきちんとプライドや誇りを持って描いていて印象が変わりました。特にグラフィティ集団のリーダーでもあるララは情熱的な一面もありながら理性的な一面も持ち合わせていて市議会との対立の際は本当に格好良かった。
ヒロイン・ブーディシアはなぜ描かなくなったのか。彼女のその理由に触れた時歯痒い思いを感じた。そしてこれはブーと主人公・ヨシの再起の物語でもあるのだと思う。実際の事件を基盤にしているそうでグラフィティと共存する町・ブリストルに行ってみたくなった。

この素晴らしい世界に祝福を!17 この冒険者たちに祝福を!(★★★★★)

この素晴らしい世界に祝福を!17 この冒険者たちに祝福を! (角川スニーカー文庫)
■あらすじ
「何の力も無かった最弱職の少年がたった一人で魔王を倒す。……そっちの方が格好良いじゃないですか!」大量のマナタイトを使用し、めぐみんの爆裂魔法で魔王城の結界を破ったカズマ一行。アクア達とも合流し、目的を果たしたとばかりに引き返そうする面々に対してカズマは――「魔王に掛かった賞金って、いくらぐらいなんだろうな?」根性なしのニートは、遂に魔王との最終決戦へ挑む!! カズマ・アクア・めぐみんダクネス―――アクセルが誇る問題児が愉快な仲間と共に魔王城に集結!! 国民的人気の異世界コメディ「このすば」、堂々完結!

■感想
17巻にして遂に完結。最後の締めくくりも「このすば」らしくて正に大団円でした。初端からめぐみんの暴走しててウケた(笑)魔王との戦いで姑息な手を使うのはいつものカズマらしいけど最後はかっこよく自爆してからのアクアの涙でずるい展開だよなと。いつもはギャグ要員のアクアがめずらしくヒロインしてたのが新鮮でした。
エリスが好きなのできちんとストーリーに絡んできてくれて良かった。色々と伏線も残したままなのでスピンオフを期待してしまいます。ダクネスもアイリスもカズマに片思いしたままだし本当にハーレムでいいんじゃなかろうか。カズマ達の冒険はまだまだ続く…!、そんなナレーションが聞こえてきそうなラストでした。

月50万もらっても生き甲斐のない隣のお姉さんに30万で雇われて「おかえり」って言うお仕事が楽しい 1(★★★★☆)

月50万もらっても生き甲斐のない隣のお姉さんに30万で雇われて「おかえり」って言うお仕事が楽しい 1 (オーバーラップ文庫)
■あらすじ
社畜の松友裕二(まつともゆうじ)が残業から帰ると、隣に住むOLの早乙女ミオ(さおとめみお)が家の鍵をなくして立ち尽くしていた。雨でずぶ濡れのミオが不憫になった松友はベランダからミオの家に入り、玄関を開けて言う――「おかえりなさい。今日は大変でしたね」そんな何気ない「おかえり」が心に刺さったミオに、松友は衝撃の提案を受ける「私の月収は五十万です。月に三十万円であなたを雇います」実は生活力ゼロで極度の人間不信だったミオと、彼女の身の回りの世話をする仕事を引き受けた松友。
ゆっくりと距離を縮めていく二人の間にあるのは単なる雇用関係かそれとも――。
孤独なお隣さんとのアットホームラブコメディ。

■感想
お隣さんとイチャイチャしているのがメインかと思いきや、イチャイチャもありながらヒロイン・ミオの心の闇を裕二が寄り添いながら癒していくお話でもあって良いラブコメでした。脇を固める元同僚の土屋や後輩の村崎も良い奴で特にUNOのエピソードが面白かった。
裕二の会社の社畜っぷりが酷すぎて最後の展開にはスカッとしましたとも。ミオの精神的な支えでもあった「あーちゃん」、「おかえり」のたった一言が一人暮らしの人にとってどれだけ心に染みるのかが分かるお話でした。松友と出会ったことによってミオの世界が広がってくれて何より。

スパイ教室02 《愛娘》のグレーテ(★★★★☆)

スパイ教室02 《愛娘》のグレーテ (ファンタジア文庫)
■あらすじ
『灯』最強のメンバーを選抜!? 最高のチームを結成せよ!不可能任務を見事達成した新生スパイチーム『灯』。次のミッションは冷酷無惨の暗殺者《屍》の殺害。より過酷な任務に、クラウスは現時点における『灯』最強メンバーを選抜することになり――。

■感想
シリーズ2冊目。今回のミッションは暗殺者「屍」の殺害、そして「愛娘」ことグレーテの活躍がメインでした。彼女の過去やクラウスへの恋心など前回と違ってストーリーに大きな仕掛けはなかったものの相変わらずの面白さでした。グレーテの秘密を知った上でクラウスは彼女を「美しい」と評し、グレーテはクラウスに恋をした。クラウスの返答は予想通りでしたが、彼が仲間を大切に思っていることは確かなので誠実な答えだったと思います。
ジビアの真っ直ぐな気性やリリィ・サラの穏やかさも相まって良いチーム編成だったかと。特にジビアがいなくてはウーヴェの信頼は勝ち取れなかっただろうし。最後のいきなりの展開についていけない、早く続きが読みたいです。

完全無欠の新人魔術生 伝説の最強魔術師、千年後の世界で魔術学校に入学する(★★★★☆)

完全無欠の新人魔術生 伝説の最強魔術師、千年後の世界で魔術学校に入学する (角川スニーカー文庫)

■あらすじ
魔神を討伐した六英雄の1人である魔術師・ギルフォード。魔神との戦いで瀕死の重傷を負ったギルは永い眠りにつき―目覚めた時、何故か千年が経過した上に若返っていて!?千年前とは違う平穏な日々や常識―本来は秘匿するべき『特異魔術』をひけらかす魔術師達に戸惑うギル。それでも、「俺たちが手に入れた平和なら、謳歌しても文句はないよな」第二の人生を楽しむべく、最高峰の魔術学校に難なく入学し、常識外れの言動と能力で数々の伝説を打ち立てていく!名門魔術学校での青春、そして謎の組織・アビスの暗躍―最強魔術師による新たなる王道魔術学園ファンタジー、開幕!!

■感想
王道の魔術学園ファンタジー。かつて魔王を討伐して六英雄の一人として讃えられたギルフォードが主人公、瀕死の重傷を負って永い眠りについたが再び目覚めることに。昔は戦いに明け暮れていたので第二の人生を謳歌して学園生活を頑張っているギルをみると応援したくなります。俺TUEEE設定ですがそれをひけらかすことはあまりないので癖もなくて読みやすい。
ツンツンな努力家・ドロシーや癒し系お嬢様・ベルベットなどクラスメイト達もキャラが多彩だし、クローディアとの擬似的な親子関係も好きです。敵との因縁はまだまだ続きそう、そして内通者もいそうなのでこれからの展開が楽しみです。

たとえばラストダンジョン前の村の少年が序盤の街で暮らすような物語9(★★★★☆)

たとえばラストダンジョン前の村の少年が序盤の街で暮らすような物語9 (GA文庫)
■あらすじ
アスコルビンでの修行を終え、自分の力に自信がもてるようになったロイド。学年筆頭生徒として王国の祭典「栄軍祭」に参加することに。ところが、隣国プロフェンから借り受けた国宝が「姿無き怪盗ザルコ」なる悪党によって盗まれてしまう!さらに時を同じくして王様も行方不明となり、軍部騒然の非常事態に突入――の裏でこっそり進められる、アルカの黒歴史隠滅作戦とは!?初めての学園祭が一転、国際問題に発展しかける中、事態を解決できるのはやっぱりロイドしかいない!「すみません。僕、本気出します」無自覚最強少年、遂に実力がみんなに知れ渡るかも? な、勇気と成長の第9弾!

■感想
シリーズ9冊目。王国の祭典・営軍祭で一年代表になって張り切るロイド。相変わらずのドタバタ騒ぎ、ロイドを巡る恋する乙女達の争いも盛り上がってました。告白寸前までしたフィロや終盤に良いところを持っていったマリーが一歩リードでしょうか。アランが地味に男前だった。
怪盗ザルコ全く良いところなし(笑)この世から消えたいと思っているソウの解決法は本当なんだろうか、不穏な伏線。今回の活躍でロイドの強さは沢山の人々に知られたわけですが、進路の問題も出てきたので将来どういった道に進むのかもロイドの課題ですね。本当に王様になったりして…。