湯屋の怪異とカラクリ奇譚(★★★★☆)

東の都にある大きな湯屋は、安いし広いし湯加減も良い。繁盛しているが、誰もそこで働く人間を知らないという。だが、なぜかその湯屋の奉公人として選ばれた佐吉は、そこが妖怪によって営まれていることを知る。番頭の闇二や妖の一夜や三夜、また子供の落書きのような小さな謎の存在“件(くだん)”に揉まれながら、佐吉は苦労しながらも新鮮な日々を送っていく。そして、一人のカラクリ技師との出会いが佐吉の運命の新たな扉を開く。人と妖怪、その秘密に近づいた佐吉は何を選び取るのか?人と妖怪が織りなすおかしくてあたたかで不思議な物語。
千と千尋の神隠し」のようなストーリーを期待していたけど別物でした。でもこれはこれで面白かった。主人公の佐吉は何気にスペックが高いですね、結構大変な目にあっているのにちゃんと順応している。若葉とのやり取りが可愛かったです。特に「ウワキモノ」発言が(笑)
仟石・白闇・伽藍堂の過去がやるせなくて、伽藍堂の言う通り原因を作った人間が一番悪いし罰せられるべきだなと。好きで食ったわけではない、と吐露している白闇が切ない。何だかんだいいつつ白闇や伽藍堂にとって仟石と過ごした時間は大切なはず。最後は賑やかな雰囲気で締めくくられていて安心しました。佐吉のカラクリ技師としての道はまだ始まったばかり、続きがあるなら読んでみたいです。