水の都 黄金の国(★★★★☆)

水の都 黄金の国

水の都 黄金の国

時は明治。日本語講師としてイタリアに赴任した誠次郎は、下宿先の料理店で働く美青年・ルカとともに、迷宮都市で起きる様々な怪事件にかかわることになって―?温かくてせつないミステリー。
穏やかで少し切なさの残る優しいお話でした。やっぱりこの方が書かれる作品が好きだなと再認識。ミステリ部分は分かりやすくて良かった。亡き友の後任でイタリアで日本語講師として働く誠次郎が主人公。ヴェネチアの町並の描写が素敵、そこに住む人々も温かい人が多いですね。前任の清人は周囲から絶大な信頼を寄せられていた人物。ルカも懐いていたようで、後半で明かされるルカの心境が切ない。誠次郎へ段々と心を開くようになっていく内に、清人との思い出を忘れてしまうんではないかと不安に陥るルカ。そんなルカを優しく包み込むように諭す誠次郎が兄のようで微笑ましかった。
最後の清人の言葉が奥深い。清人の誠次郎への思いがわかって良かった。清人は幸せだった、誠次郎が言うようにいつかルカもそう思える日がくるといいな。