ただそれだけでよかったんです(★★★★☆)

電撃小説大賞・大賞受賞作品。竹岡さんのイラストにつられて購入。苛め・スクールカーストなどを題材にしたシリアスな作品。大人しくていつも孤立していた主人公の菅原がどうやって人気者の岸谷を自殺に追い込んだのか。そこに隠された菅原の行動の意味が切なくてやるせなかった。なんで周囲にまともな大人がいないのだろうか。クラスの連中も自分勝手過ぎて嫌気がさす。
人間テストの存在が恐ろしい。そんなのやったら最下位決定ですもん。ソーさんの正体は意外でした。タイトルの「ただそれだけでよかったんです」が最後に出てきた時は菅原たちの時間を巻き戻してほしいと心底思った。結局のところスクールカーストに怯えて菅原を苛めることに加担した岸谷も決して強い人間ではなかった。ただ普通に友達として笑い合うことがこんなにも難しいだなんて残酷。菅原のそばに紗世がいてくれて本当に良かった。菅原には少しずつでいいから一歩を踏み出してほしい。