化け者心中

■感想

事故で足を切除してしまった元女形の魚之助と鳥屋を商う藤九郎は座元に請われて鬼探しに乗り出すが···。

独特の文章のリズムに慣れるまで少し時間がかかってしまいましたが、慣れたら逆にグイグイ引き込まれるような世界観でした。歌舞伎の裏をリアルに描きつつ、比喩でもなく普通に本物の鬼が登場したのには驚きました。

魚之助も含めて容疑者6人の歌舞伎に対する情熱が半端なく、他者から見たら異常な程の執着ともいえるのではないかと。怪我をしたことで舞台から遠のいた魚之助の苦悩は特に深くて、終盤の藤九郎の寄り添うような優しい言葉が素敵でした。