オークブリッジ邸の笑わない貴婦人 新人メイドと秘密の写真(★★★★☆)


十九世紀英国のお屋敷を再現したオークブリッジ邸でメイドして働くことになった愛川鈴佳のお話。結構面白かった。櫻子さんシリーズも舞台が北海道だよな〜と思ったら作者さんは札幌出身なんですね。舞台になる東川町の描写が北海道愛に溢れているように感じられました。
携帯やパソコンなど現代を感じさせるものは一切使用禁止。掃除には蜜蝋と石鹸と油を混ぜたワックスを使用したりなど細かいところまで徹底的に十九世紀を再現させている。専門家が監修しているだけあって本格的、当時の風習を知ることが出来て豆知識も身に付いた。過酷な労働環境と厳格な女主人になかなか馴染めないという苦難を乗り越えながら鈴佳がメイドのアイリーンとして成長し、女主人との間に絆が芽生えていく過程が丁寧に描かれている。
なぜ十九世紀の英国を再現するなどという大掛かりなことをしたのか。それには女主人が密かに胸に秘めた大切な思い出が要因となっている。当時を振り返りながらアイリーンに語る女主人とそれを真剣に聞くメイドの姿が微笑ましい。この計画を全面的に支えているユーリさんもお祖母ちゃん思いだなと。スミス夫人もミセス・ウィスタリアも良い人だ。もう少しこの物語を読んでいたいなと思った。