平安後宮の薄紅姫 二 宮廷去りし皇后宮と伊勢物語 (★★★★☆)

■あらすじ
怪異や難事件の駆け込み寺・薄紅の姫。中宮を狙う“鬼”の事件を落着させ、その昼の姿である末席の女房として念願の書司となった。一方、静かに読書にふけりたい夜の薄紅の元には、願いに反して親しくなった晴明の孫・奉親が訪ねてきては面倒に巻き込んでいく。そんなある日、彼女は後宮の蔵書破損をきっかけに密命をくだされた。後宮を去ってしまった皇后宮を連れ戻せ―と。後宮の祈祷も担う奉親とともに、この難題に挑むことに。物語知識を駆使するものの、皇后宮は断固として拒否し…。

■感想
シリーズ2冊目。伊勢物語を破損した犯人探しからここまでストーリーが広がっていくとは思わなかった。禎子が後宮を去った理由、嫄子が禎子を後宮に連れ戻したい真意、対立しているはずの二人の姫君の絆が素敵。互いを想っているからこそすれ違ってしまう、嫄子の最期は悲しいけれど禎子との時間をゆっくり過ごせて良かった。禎子様の男らしいキャラに惚れました。
物語をこよなく愛する薄紅によって二人の姫君が救われたといっても過言ではない。雨の中一晩中土下座をした奉親と義盛は本当に薄紅を信頼しているんだなと。一緒になって土下座する能信良いキャラしてる。嫄子から物語を書いてほしいと託された薄紅の今後が気になります。

<Infinite Dendrogram>-インフィニット・デンドログラム- 14.<物理最強>(★★★★☆)

■あらすじ
二国間による講和会議も決裂し、戦闘状態へと移行する両陣営。レイvs.“物理最強”“獣王”ベヘモット。アズライトvs.“衝神”クラウディア。シュウvs.“怪獣女王”レヴィアタン。お互いに譲れないもののため、各々全ての力をかけて衝突するこの戦いの行方は果たして―。レイがゲームを始めて以来、最も過酷な戦いの幕が今上がる!大人気VRMMOバトルファンジー、決死の第14巻!!

■感想
シリーズ14冊目。バトルてんこ盛りで見応えのある巻でした。レイ、アズライト、シュウがそれぞれの敵と衝突していく。物理最強といわれるだけあってベヘモットの強さが圧倒的、最後まで諦めなかったレイも凄いけど仲間の援護があったからこそだと思うと次に向けての課題が残ったかもしれない。皆レイを信じて託していく展開に胸が熱くなる。
クラウディアの秘密がわんさか明かされましたね、アズライトなりに真摯にクラウディアの気持ちに返事をするあたりに彼女の誠実さが滲み出ています。この戦いで拗れてしまった関係がいつかまたかつての二人に戻りますように。月夜の守銭奴っぷりがエグい(笑)

亡びの国の征服者 2 ~魔王は世界を征服するようです~(★★★★☆)

■あらすじ
家族の愛を知らぬまま死に、“もう一つの人類”の侵略に脅かされる王国で新たな生を受けた少年ユーリ。彼は騎士家の名家であるホウ家の跡取り息子として、王女であるキャロルや魔女家の生まれであるミャロらと共に、騎士院での生活を送っていた。そしてユーリは生まれて初めて、“もう一つの人類”―クラ人と出会う。亡命してきた宗教者であり、クラ語講師であるイーサ。ユーリは彼女からクラ語を学びながら、「敵国」への理解を深めていくのだった。数年の時が流れ、ある目的から学業の傍ら事業を興すことを決めたユーリ。前世の知識を元に植物紙の製品化を目指す彼は、協力者を得ながら試行錯誤を繰り返していく。しかし事業が成功した矢先、王都を裏で牛耳る魔女家の魔の手が迫り…!?のちに「魔王」と呼ばれる男は、静かに、しかし確実に覇道を歩む―。「小説家になろう」で話題の超本格戦記譚、待望の第2幕!

■感想
シリーズ2冊目。シャムやキャロルの妹も入学して周囲が賑やかになっていく。敵国の情報も入れつつ、紙を扱う事業を新たに興すことにしたユーリ。親友・ミャロの立場も考えながら魔女のボス相手に啖呵を切るユーリがかっけー。それにしてもミャロさん男装女子だったのね、ユーリにだけはバレたくなかった気持ちが尊い
そして終盤はユーリとキャロルの社会見学。キャロルへ現実を教えつつも自分でなるべく気づかせようとするユーリが立ち位置的に兄貴っぽい。指輪もらって照れるキャロルが乙女、ヒロイン力がアップしましたね。世界観が少しずつ広がっているのでいずれは国を飛び出すのかな?続きが楽しみです。

亡びの国の征服者 1 ~魔王は世界を征服するようです~ (★★★★☆)

■あらすじ
家族の愛を知らぬまま死に、異世界に転生した少年ユーリ。両親の愛を一身に受けながら新たな人生を歩むユーリだったが、彼の住む国家群は“もう一つの人類”の侵略によって亡びの危機に瀕していた。槍を振るい鳥を駆る王国の剣―騎士家。そんな騎士家の頭領だった叔父の戦死は、ユーリとその家族を戦乱の運命へと巻き込んでいき…!?「小説家になろう」で話題の超本格戦記譚、ついに開幕!

■感想
川で溺れた少女を助けようとして死んでしまった青年が異世界に転生して一から人生を始める異世界もの。設定がしっかりしていて全体を通して安定した面白さ。主人公・ユーリは子供だからといってあまり演技もせず割と素で対応しているので大人っぽ過ぎて浮いてますな。でもだからといって冷たいわけでもなく現実的で淡々としたところが魅力的です。悪ガキをぶん殴る場面はスカッとした(笑)
今回は幼少期から学院に入学するまで、キャロルにも気に入られたようだし穏やかな牧場ライフは無理だろうな…。これからどんどん面白くなりそうです。

ひきこまり吸血姫の悶々3(★★★★☆)

ひきこまり吸血姫の悶々3 (GA文庫)

ひきこまり吸血姫の悶々3 (GA文庫)

■あらすじ
青い空。白い雲。ようやく得られた休暇で海辺のリゾートを満喫するコマリ。そんな吸血姫の前に一人の少女が現れる。「一緒に世界を征服しない?」剣の国の将軍ネリアから、とんでもないお誘いを受けてしまった!その一方で別の国家、天照楽土からも外交使節が来訪。「一緒に世界を平和にしませんか?」東国の最強将軍と噂される和風少女カルラは、まったく逆の提案を投げかけてくるのだった。各国の思惑は錯綜し、やがて世界を巻き込む大戦争へと発展!夏休みから急転直下、戦局の鍵を握る立場となってしまったコマリ。ひきこまり将軍が新たな時代を切り開く!?

■感想
シリーズ3冊目。各国を巻き込んだ戦争が勃発し、ストーリーの世界観が一気に広がった回でした。新キャラのネリアは不遇な過去を背負いながらも現状を覆そうと懸命に努力する健気な一面もあるキャラ、コマリとのコンビも凸凹コンビっぽくて好きです。
サクナが地味に粘り強くて敵にしたらいけないタイプ…。苦戦しそうになるも悪どい敵が敗北する展開は痛快でした。ムルナイト帝国軍は良いキャラが揃ってるなと改めて思った。そして同じく新キャラのカルラはコマリと似たタイプ、次回はメイン回なのかな?

死体埋め部の回想と再興(★★★★☆)

死体埋め部の回想と再興 (ポルタ文庫)

死体埋め部の回想と再興 (ポルタ文庫)

■あらすじ
正当防衛で相手を殺してしまったところを同じ大学の先輩だという織賀に目撃された祝部。秘密裡に死体の処理を請け負う『死体埋め部』の部長(ただし部員は織賀のみ)を自称する織賀に窮地から救ってはもらったものの、祝部は強制的に二人目の部員として、織賀待望の後輩になる羽目に。織賀が運ぶ“奇妙な死体"がなぜそんな風に死んだのか、推理をさせられながら、祝部は織賀とともに死体を埋めるため、織賀の愛車のジャガーで山に向かう─。在りし日の織賀と祝部の物語のほか、“あのあと、もしも、そうなら"という、分岐した未来をそれぞれ描いた二編も含めた青春の補遺集。

■感想
補完的な意味合いが強いシリーズ2冊目。二人が平常運転で部活動していた時のお話とあの決定的な別れの後の分岐二編が収録。推理部分も面白いけどやっぱり個人的には祝部と織賀の関係に焦点をあてながら読了。死体埋めでやろうとしていることは重いのにオリガマウンテンに行くまでの二人の軽快な会話が好き。
織賀に出会った瞬間から祝部には織賀がいないと駄目なんだなと「不在」を読んで実感した。祝部が痛々しくて幽霊みたいになっとる。それに比べて「再会」では生き生きしてるよー。私は脳内で勝手に再会エンドで幕引きしたいと思います。

罪の名前(★★★★☆)

罪の名前

罪の名前

■あらすじ
日向には秘密がある。それは、口の中で生き物の蠢きを感じるのをが楽しくてやめられないこと。誰からも気味悪がられるその秘密を唯一守ってくれるのが、幼馴染の隼人だった。思いがけず、隼人が同級生に嫌がらせをされていることを知った日向は、ついにある行動に出るが(虫食い)。人間の本性を炙り出す傑作短編集。

■感想
短編集。どのお話もハッピーエンドとは程遠い不吉な余韻を残すラストで締めくくられている。嘘をつく患者に踊らされる医者、弟に恋をしてしまった不器用な兄の最期、呼吸をするように嘘で自分を塗り固める女友達。語り手が畏怖を感じる対象はどれも一般的な常識から逸脱した者ばかり。でも弟を愛してもがき苦しむ兄がいたたまれなくていっそのこと弟に手紙の真相をぶちまけても良かったのに、とさえ思った。
特に印象に残ったのは「虫食い」。思わず口の中の感触が気色悪くなるような描写はさすが。最後の隼人の「どうしてなんだろうな」という言葉が胸に響いた。その癖さえなければ隼人と日向はきっと一歩進んだ関係になってもおかしくないのに。たまにはこういう心が引き摺られるようなお話もいいな。