鏡のむこうの最果て図書館 光の勇者と偽りの魔王(★★★★☆)

鏡のむこうの最果て図書館 光の勇者と偽りの魔王 (電撃文庫)

鏡のむこうの最果て図書館 光の勇者と偽りの魔王 (電撃文庫)

◼あらすじ
空間が意思と魔力を持ち、様々な魔物が息づく世界・パライナの北端に、誰も訪れない“最果て図書館”はあった。記憶のない館長ウォレスは、鏡越しに“はじまりの町”の少女ルチアと出会い「勇者様の魔王討伐を手伝いたい」という彼女に知恵を貸すことに。中立を貫く図書館にあって魔王討伐はどこか他人事のウォレスだったが、自らの記憶がその鍵になると知り…臆病で優しすぎる少女。感情が欠落したメイド。意図せず世界を託された勇者。彼らとの絆を信じたウォレスもまた、決戦の地へと赴く―人知れず世界を守った人々のどこか寂しく、どこまでも優しい「語り継がれることのないお伽噺」。第25回電撃小説大賞・銀賞受賞作。

◼感想
まるでお伽噺のような雰囲気で、最後まで優しさと温かさに包まれた作品だった。「最果ての図書館」という場所も面白い舞台設定で現実にこんな場所があったらぜひ訪れたい。退屈な毎日の中で鏡越しでルチアという少女に出会ったことにより、主人公・ウォレスは失った自分の過去を探していく。
魔王と勇者の話に隠された真実をウォレスが乗り越えて外の世界で再び活躍する姿をみれたのが嬉しかった。個人的にはウォレス+リィリの関係に焦点をあてた方がロマンチックな展開も少し期待できたのかなと思います。一冊に綺麗にまとまっていましたがあとがきを読むと続きがありそうな雰囲気でした。

七つの魔剣が支配する(★★★★☆)

◼あらすじ
春――。名門キンバリー魔法学校に、今年も新入生がやってくる。黒いローブを身に纏い、腰に白杖と杖剣を一振りずつ。胸には誇りと使命を秘めて。魔法使いの卵たちを迎えるのは、満開の桜と魔法生物のパレード。喧噪の中、周囲の新入生たちと交誼を結ぶオリバーは、一人の少女に目を留める。腰に日本刀を提げたサムライ少女、ナナオ。二人の魔剣を巡る物語が、今始まる──。

◼感想
正直ハリポタ臭がすごいですが、こういう世界観が好きなので面白かったです。主人公・オリバーの印象は器用貧乏、突出した能力を持っているのにナナオやミシェーラに比べると後方支援型で地味。しかし終盤で彼の新たな一面が判明、辛い過去を背負いながら復讐を誓う姿は正に主人公に相応しい。
カティの自分の意思を貫き通す強さがカッコいい。ガーランドに言い返す場面が好きです。他の仲間も魅力的なキャラばかりなので前作みたいに退場するキャラがいないことを祈るばかり…。

撃ち抜かれた戦場は、そこで消えていろ ―弾丸魔法とゴースト・プログラム― (★★★★☆)

 

 ■あらすじ

機甲車が這い、弾丸魔法が降る、東国と西国の百年に及ぶ戦争。追い詰められた東の少年兵レイン・ランツは、見慣れぬ弾丸を放ち、敵将校を殺害する。―刹那、世界が一変した。戦場は通い慣れた士官学校へ切り替わり、死んだはずの級友の姿も。戸惑うレインに、弾丸を作ったという少女エアは告げる。「撃った相手を最初からいなかった世界へ再編成する“悪魔の弾丸”。このまま使いたい?」終わりなき戦場を前に、レインの決断は―「終わらせる。変えてやる。この弾丸で、全てを」世界の理を撃ち抜く、少年と少女の戦いが始まる―。第31回ファンタジア大賞“大賞”受賞のミリタリックファンタジー!

 

■感想

大賞受賞作品なだけあってストーリー設定や文章など安定した出来栄えで楽しめました。エアの弾丸に撃ち抜かれた者は存在自体が世界から抹消され、世界は再編成される。今回エア以外にも同類が登場しますが、エアの能力が一番チートなのでは…?と思いました。主人公・レインも平凡そうにみえて、胸の内に苛烈な想いを秘めた少年。悪魔の弾丸を使って戦争を終わらせることを決意した彼の今後に注目です。

エアの最後の笑顔が可愛かった。レインとエアの関係これからどんどん相棒らしくなっていくといいな。気になるのは最後にアスリーがキルリリスの弾丸を持っていたことですが、次回からどう関わってくるのか楽しみです。

筆跡鑑定人・東雲清一郎は、書を書かない。鎌倉の夜は、罪を隠さない(★★★★☆)

 

■あらすじ

東雲清一郎は、大学生活のかたわら書家として活動し、筆跡鑑定も行う超絶イケメン。だが、中身はトゲトゲなハリネズミのような毒舌家だ。おしゃれなカリグラフィー、図書館本の落書き、離別した父からの手紙、そして過去からのメッセージ―「気持ちに嘘はつけても、文字は偽れない」。そう断言する彼の秘密が、また一つ明らかになっていく…古都・鎌倉を舞台に、文字と書、人の想いにまつわる事件を描く大人気ミステリー、第4弾!

 

■感想

シリーズ4冊目。「呆れる」の話は本当に呆れてしまうようなオチだった。「呪われる」は完全に自業自得なのでこの結末で良かったかと。相変わらず裏辻が物騒なこと考えていそうで怖い。

美咲の影響や将来のことを考えて少しだけ他人に対して柔軟な態度をとるようになった東雲、そんなせっかくの東雲の変化も物語後半で元に戻ってしまう。東雲の過去を追いながら自分の気持ちを自覚していく美咲、自分よりも東雲がかつて好きだった葉月を優先しようとしたことに傷ついてしまうのがすごく分かる。でも最後の東雲の「なかなおり」で一気に雰囲気が明るくなりました。今回東雲の心の扉を開いたのは間違いなく美咲なので前向きに頑張ってほしいです。

 

妹さえいればいい。 (11) (★★★★☆)

◼あらすじ
小説がまったく書けないという大スランプに苦しむ伊月を、恋人の那由多は優しく見守る。土岐や京は伊月を復活させるための方法を模索するのだが、結果は芳しくない。一方、女の子であることを隠さなくなった千尋にも、大きな変化が訪れるのだが…。そんななか、第16回GF文庫新人賞の授賞式が開催される。青葉や木曽たちが受賞してから、はやくも一年の月日が経っていたのだ。怒涛の流れに翻弄されながらも、主人公たちは足掻き続ける―。大人気青春ラブコメ群像劇、衝撃の第11弾登場!

◼感想
シリーズ11冊目。前回のスランプから脱することはないまま終了。撫子に引き続きまさかの千尋まで闇落ちとは…。春斗らしく誠実に対応してましたし、彼も京とどうなるか先行き不明で千尋にもまだチャンスがあるのかな?それがきっかけで伊月と父親が仲直りしたのは良かったと思います。
那由多とは別れてしまいましたか…。「俺の物語は、もうこの程度でいい」という伊月の心の呟きが切ない、小説に対して今までは全神経を注ぎ込んでいたのにいつの間にか妥協してしまっていた。那由多との別れをきっかけに今度こそ復活してほしいですが…。海津さんは少しアシュリーさんに構ってあげてください。

五条雪彦の新説な美術史 諸説あります。(★★★★☆)

五条雪彦の新説な美術史 諸説あります。 (富士見L文庫)

五条雪彦の新説な美術史 諸説あります。 (富士見L文庫)

◼あらすじ
女学生の熱い視線を浴びながら、ニコリとも笑わない男―美術史准教授・五条雪彦。幼馴染でもある雨音は、この春から彼の助手になった。しかし、雨音の専門は心理学。世界的ベストセラーを持つ雪彦の研究に苦戦中だ。「先入観なく作品を見てくれる雨音の視点が必要だ」と言ってくれる雪彦の期待に応えるべく絵画と格闘する雨音だが、彼が解く謎は美術だけではなくて―?ダ・ヴィンチドラクロワラファエロ、ベラスケス…。名画と日常をつなぐ、新解釈美術ミステリ!

◼感想
美術史の准教授と助手が有名な絵画を題として新たな解釈を議論する美術ミステリ。一枚の絵画に様々な意味を作者が込めていることを実感した一冊でした。それを雪彦と雨音がお互いの専門分野を生かしながら丁寧に紐解いていく。1話目はダ・ヴィンチの腐敗した教会への痛烈な批判、変り者とはよく聞くけどダ・ヴィンチが高潔だったからこそこういう作品が生まれたのだろう。
ラス・メニーナス」は心が穏やかになるような解釈でした。タイトルに「諸説あります」の通りあくまで可能性のある一説に過ぎない、でも雪彦達の考えは個人的に好きです。最後の雪彦の「好き」はLOVEだと思います…!

七姫物語 東和国秘抄 ~四季姫語り、言紡ぎの空~(★★★★☆)

 

 ■あらすじ

ある大陸の片隅。そこでは七つの都市が先王の隠し子と呼ばれる姫君を擁立し、国家統一を目指して割拠した。七宮カセンの姫に選ばれたカラスミ。彼女を担ぎ出したのは、テン・フオウ将軍とその軍師トエル・タウ。二人とも桁違いの嘘つきで素姓も知れないが、「三人で天下を取りにいこう」と楽しそうにそう話す二人の側にいられることで、カラスミは幸せだった。しかし、隣の都市ツヅミがカセンへ侵攻を始めて…。時代に翻弄されながらも自らの運命と向き合う少女の姿を描く、オリエンタルファンタジー

 

■感想

将軍・テンと軍師・トエルに見初められ七宮の姫に擁立された少女・カラスミを描くオリエンタルファンタジー。主人公・カラスミは優しくて純真な少女、彼女にとっては国がどうとかよりも大好きなテンやトエルと一緒にいられることの方が大切なんだよね。そんなカラスミの思いもよく分かる。メインの3人組はキャラも魅力的だし、バランスもとれていて好きになりました。カラスミとヒカゲの会話も和みました、ヒカゲが呼び捨てを強要するところとか。

ラスボスはクロハなのかな?確かに不思議な少女でした、今後カラスミが彼女とどう向き合っていくのか気になる。次なる敵は常盤姫、あまり犠牲者がでないといいけど。続きも順調に刊行されますように。