五条雪彦の新説な美術史 諸説あります。(★★★★☆)

五条雪彦の新説な美術史 諸説あります。 (富士見L文庫)

五条雪彦の新説な美術史 諸説あります。 (富士見L文庫)

◼あらすじ
女学生の熱い視線を浴びながら、ニコリとも笑わない男―美術史准教授・五条雪彦。幼馴染でもある雨音は、この春から彼の助手になった。しかし、雨音の専門は心理学。世界的ベストセラーを持つ雪彦の研究に苦戦中だ。「先入観なく作品を見てくれる雨音の視点が必要だ」と言ってくれる雪彦の期待に応えるべく絵画と格闘する雨音だが、彼が解く謎は美術だけではなくて―?ダ・ヴィンチドラクロワラファエロ、ベラスケス…。名画と日常をつなぐ、新解釈美術ミステリ!

◼感想
美術史の准教授と助手が有名な絵画を題として新たな解釈を議論する美術ミステリ。一枚の絵画に様々な意味を作者が込めていることを実感した一冊でした。それを雪彦と雨音がお互いの専門分野を生かしながら丁寧に紐解いていく。1話目はダ・ヴィンチの腐敗した教会への痛烈な批判、変り者とはよく聞くけどダ・ヴィンチが高潔だったからこそこういう作品が生まれたのだろう。
ラス・メニーナス」は心が穏やかになるような解釈でした。タイトルに「諸説あります」の通りあくまで可能性のある一説に過ぎない、でも雪彦達の考えは個人的に好きです。最後の雪彦の「好き」はLOVEだと思います…!