ヒポクラテスの憂鬱(★★★★☆)

ヒポクラテスの憂鬱

ヒポクラテスの憂鬱

“コレクター(修正者)”と名乗る人物から、埼玉県警のホームページに犯行声明ともとれる謎の書き込みがあった。直後、アイドルが転落死、事故として処理されかけたとき、再び死因に疑問を呈するコレクターの書き込みが。関係者しか知りえない情報が含まれていたことから、捜査一課の刑事・古手川は浦和医大法医学教室に協力を依頼。偏屈だが世界的権威でもある老教授・光崎藤次郎と新米助教の栂野真琴は、司法解剖の末、驚愕の真実を発見する。その後もコレクターの示唆どおり、病死や自殺の中から犯罪死が発見され、県警と法医学教室は大混乱。やがて司法解剖制度自体が揺さぶられ始めるが…。
今回は司法解剖制度の仕組み自体に問題提起する内容となっている。そのきっかけを作ったのは「コレクター」と名乗る人物によるネット上の書き込み、既に事故死として処理された事件に対して疑問をぶつけるような内容で真琴たち法医学教室のメンバーも事件に巻き込まれていく。その上で問題になってくるのが解剖をするのに必要になってくる費用。法医学自体が医療の中でも潤沢な資金を回してもらえない分野の為たとえ解剖をしたくてもお金がないので解剖が出来ない。真琴や古手川が今回一番困ったのはこの点なんだろうなと。この小説を読んでいると法医学への資金配分の見直しをぜひしてほしいなと実感します。
コレクターの正体に関しては割りと分かりやすかった、最低としか言い様がない。光崎教授の相変わらずの老獪ぶりはさすが。真琴と古手川は似た者同士ですね、お互い気になるならさっさとくっついてしまえ!と何度思ったことか。