蓮見律子の推理交響曲 比翼のバルカローレ(★★★★☆)

将来何者かになる幻想だけを抱きながら何者にもなれず、大学を留年しながらブログやアフィリエイトで小銭を稼ぐ生活を送っていた葉山理久央。ある日突然、天才作曲家蓮見律子の前に引きずり出された葉山は、律子から新曲の作詞を依頼される。彼女にはない「詩情」を葉山の文章から読み取ったそうだ。作詞家として雇われたはずが破天荒な律子のお世話係のようなもので、葉山は早々に仕事を辞退しようとしていた。しかし、若き音楽家本城湊人との出逢いが葉山の惰性な人生を激変させる。左手のための旋律の秘密、そして殺人事件。真実を隠す奇しき交響楽が奏でられるとき、蓮見律子の推理が冴える。
天才作曲家・蓮見律子からの突然の作詞依頼により平凡な主人公・久央の人生が段々と変化していく。留年して家で寝てるぐらいならきちんと授業を出た方がよくないか?、という突っ込みは置いといて総じて好みのストーリーでした。年上のヒロインに主人公が振り回されている関係が好きだったりします。律子がきちんと久央の才能を認めているところいいなと。
生意気だけどどこか憎めない湊人、ああなってしまって悲しいけど最後まで姉思いな優しい彼であったことときちんと姉にその思いが伝わったことが救い。ちゃんと二人で話し合って欲しかったとは思いますが。それにしても娘を犯人扱いした母親が酷すぎる、自分が原因のくせに。作詞が完成したら久央と律子の雇用関係は終わりのはずですが、まだパシられているようでひと安心(笑)シリーズ化してほしい。