臨床真実士ユイカの論理 文渡家の一族 (★★★☆☆)

前にこの著者の作品を一作だけ読もうとしましたが文章が合わずに最初の十数ページで断念しました。今回はあらすじを読んで面白そうだなと思って再挑戦。最初は唯花が晴彦に出題する問題がなかなか理解できなくて挫折しましたが、それでもなんとかページを読み進めている内に文渡村の閉鎖的で異様な雰囲気に段々と飲み込まれていきました。
特に最後の二転三転していく唯花の推理劇は見事でした。残念なことに私の頭では半分も理解できませんでしたが。しかし、よくこんなに大きな舞台装置を準備したものです。
美佐の弁舌が見事だった、病弱でなければもっと立派に当主として文渡家を支えられただろうに。佐奈のやられっぷりを見て、いかに信頼というものが大事か身にしみました。本物の紗江子の一種の呪いでもある「許す」という偽りの言葉によって何人もの人間の人生が文渡家に縛り付けられていたと思うとゾッとした。