月の汀に啼く鵺は 巷説山埜風土夜話の相続人(★★★★☆)

月の汀に啼く鵺は 巷説山埜風土夜話の相続人 (集英社オレンジ文庫)
■あらすじ
郷土史家だった祖父が死んだ。顔も知らない祖父に複雑な思いを抱いていた大学生の晶は、弟の雫と共に遺品を処分することに。だが、雫が見付けた遺稿「巷説山埜風土夜話」をなぞるような不思議な事件に次々と巻き込まれ……。水没した村から出土した骨、まれびとさんの足音、鵺の啼く汀。真偽不明の伝承に隠された過去、あえて真実を覆い隠した祖父の真意とは――?

■感想
絶縁状態だった祖父が残した遺稿を見つけた晶、その内容をなぞらえたような不思議な事件が起きて巻き込まれていく。民俗学が好きなので興味深い話ばかり。「まれびとさん」は終盤特に怖くて、逃げずに対話しようとした晶さんマジで勇者。隠したかった真実をこういった形で残していくのは素敵だなと思いました。
晶達のお祖父さんは不器用で不幸にもタイミングが悪かったのだろう。物語の要所々々で娘や孫を大切に思っていたと分かる場面がある、あの世との境で晶を引き止めたのにはジーンときました。全てを受け入れられなくても少しずつお祖父さんと向き合ってほしいです。晶と雫のブラコンっぷりにニマニマしました。