ふりむけばそこにいる 奇譚蒐集家 小泉八雲(★★★★☆)

19世紀英国。隻眼の異端者・小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)。孤独な少年が見つけた、怪異と友情――。19世紀英国。父母を亡くし、一族から疎まれて北イングランドの神学校に送られたオーランドは、この世の怪を蒐集する奇妙な少年と出会う。生者を道連れに誘う幽霊列車、夜の寄宿舎を彷徨う砂男と聖母マリアの顕現、哀切に歌う人魚の木乃伊の正体とは。怪異が、孤独な少年たちの友情を育んでゆく。のちに『怪談』を著したラフカディオ・ハーン――小泉八雲の青春を綴る奇譚集。

小泉八雲の少年時代を描いた怪奇と友情の物語。窒息してしまいそうな学校生活にいきなり放り込まれたパトリック。八雲との出会いも怪異がきっかけで最初は距離があったもののお互いのことを知っていく内に友情を育んでいく展開は正に青春。八雲の守護霊的な存在である兄さんが可愛い、兄さんの存在は八雲の数少ない安らぎなんだろうな。
「忘れじのセイレーン」は愛する人を気遣う一途な思いにジーンときた。個人的には「誰がために鐘は」が一番怖かった、でもウェアリング夫人の今後に希望がみえたのには安心しました。パトリックがまたチェロを弾けるようになるといいな。