鬼の蔵 よろず建物因縁帳(★★★★☆)

鬼の蔵 よろず建物因縁帳 (講談社タイガ)

鬼の蔵 よろず建物因縁帳 (講談社タイガ)

『ON 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子』の著者が描く、哀しい怪異譚――。 山深い寒村の旧家・蒼具家では、「盆に隠れ鬼をしてはいけない」と言い伝えられている。広告代理店勤務の高沢春菜は、移築工事の下見に訪れた蒼具家の蔵で、人間の血液で「鬼」と大書された土戸を見つける。調査の過程で明らかになる、一族に頻発する不審死。春菜にも災厄が迫る中、因縁物件専門の曳き家を生業とする仙龍が、「鬼の蔵」の哀しい祟り神の正体をあきらかにする。
表紙の不吉な雰囲気からすでにストーリーに呑み込まれているような気がして一気に読了。予想通りしっかりとしたホラーで怖かったです。蒼具村という閉鎖的な村での独特の因習が異質で不気味だけど、それと同時にただひたすら悲しかった。飢饉や厳しい年貢の取り立てからこのような状況が起こってしまうのは必然なのかもしれないけど、犠牲になった子のことを考えると…。あの男の子はどんな気持ちで禁忌とされる盆に隠れ鬼をしたのだろうか、そんな疑問がぐるぐると頭を駆け巡って離れません。
とにかく長坂という男がムカッとくる。春菜がこんな男に泣き寝入りしない逞しい女性で良かったです。最後に心配して駆けつけた春菜を抱き締める仙龍さんが男前!続きも発売される予定とのことなので楽しみです。