神の値段(★★★★☆)

【2016年・第14回『このミステリーがすごい!大賞』大賞受賞作】 神の値段

【2016年・第14回『このミステリーがすごい!大賞』大賞受賞作】 神の値段

メディアはおろか関係者の前にも一切姿を見せない現代美術家・川田無名。彼は、唯一つながりのあるギャラリー経営者の永井唯子経由で、作品を発表し続けている。ある日唯子は、無名が1959年に描いたという作品を手の内から出してくる。来歴などは完全に伏せられ、類似作が約六億円で落札されたほどの価値をもつ幻の作品だ。しかし唯子は突然、何者かに殺されてしまう。アシスタントの佐和子は、唯子を殺した犯人、無名の居場所、そして今になって作品が運びだされた理由を探るべく、動き出す。幻の作品に記された番号から無名の意図に気づき、やがて無名が徹底して姿を現さない理由を知る。
普段は関わることはないであろう絵画の世界について知ることができたのはプラスポイント、当たり前だけどやっぱり奥深い世界だ。「無名」というミステリアスな存在がこの物語の一番の魅力だと思う。生きているのか死んでいるのか、はたまた誰かが「無名」の名を使っているのか。最後まで考えさせられました。絵を描くのに道具や線の一本一本までこだわりがあって驚いた、でも無名は構図の指示をするだけで実際に描くのは他の職人なんですね。
ミステリ部分は普通かな。佐和子から見た経営者としての唯子は厳しい人だったけど、本当はただ純粋に無名の作品に感動してこれまで無名と供に歩んできた唯子の方が素顔なんだろうな。あの人はこれからどうするのだろうか。