僕が愛したすべての君へ(★★★★☆)

人々が少しだけ違う並行世界間で日常的に揺れ動いていることが実証された時代―両親の離婚を経て母親と暮らす高崎暦は、地元の進学校に入学した。勉強一色の雰囲気と元からの不器用さで友人をつくれない暦だが、突然クラスメイトの瀧川和音に声をかけられる。彼女は85番目の世界から移動してきており、そこでの暦と和音は恋人同士だというのだが…並行世界の自分は自分なのか?
意識だけが並行世界間で日常的に揺れ動いていることが判明した世界でのお話。 こんな世界になったら疑心暗鬼になって恋愛が出来ない人が続出するんじゃなかろうか。 幼年期での亡くなってからお祖父ちゃんの愛情にやっと気付いたというオチから既にウルっときてしまいました。暦が和音に何度もめげずにアタックする姿は微笑ましく、暦の告白をさらりとかわす和音のサバサバしたキャラにも好感が持てました。二人の関係が眩しすぎて、逆に自分の寂しすぎる状態が浮き彫りになってなんともいえない気持ちになりましたが…。
二人が結ばれてからの葛藤に対して暦が出した答えは、どの世界の和音も丸ごと愛していく、というもの。それは素敵な考えだけどとても難しいことが最後の事件で鮮明になっていく。でもこの事件を通して暦と和音の絆が確固たるものになり、幸せなラストに繋がったのだから良かったのだろう。「君を愛した〜」は未読なのでそちらも読んでみたいと思います。