エステルドバロニア

エステルドバロニア

■あらすじ
VR戦略シミュレーション『アポカリスフェ』の頂点に君臨する男はある日、プレイ中に突如として激しい頭痛に襲われ、意識を失ってしまう。ふと男が目を覚ますと、そこはゲーム内で作り上げてきた魔物国家“エステルドバロニア”の王城であり、自らの姿は人間でありながら魔物の王である“カロン”そのものだった。ゲームに酷似したこの異世界で生きていくことを余儀なくされたカロン。彼は強力な魔物たちを従える立場にありながら、自身は非力なただの人間であるという事実に恐怖するが、気持ちを奪い立たせる間もなく国の緊急事態に対処することになり…!?

■感想
「アポカリスフェ」というVRゲームの世界で王であるカロンとして生きることになった主人公のお話。カロン自体は戦闘能力がゼロに等しい人間、対して部下は優秀な魔物ばかりで彼らの力に怯えつつも王としての責務を果たそうとする。
軍団長達は皆カロンによって生み出された魔物達であり、王である同時に父親のような存在でもある。カロンに対する好感度MAXで言葉をかけられただけで幸せになる軍団長達が微笑ましい。
今回は国内紛争でしたが、終盤の展開を考えると他国を巻き込んでの争いも勃発して世界観が広がっていきそう。各キャラも魅力的なので深く掘り下げるエピソードがあったら大歓迎。

忘却聖女(1)

忘却聖女 1巻 (デジタル版SQEXノベル)

■あらすじ
ある日、世界は“私”を忘れた追放された聖女は、ささやかな幸せを取り戻すために再び聖女に返り咲く“聖女”――それはアデウス国の象徴であり、神の代弁者。歴代随一の治癒と浄化の力をもつ第十三代聖女マリヴェルはある日、目を覚ますと周囲の人間から綺麗さっぱり忘れ去られていた。聖女を騙った冒涜者として神殿から追放されたマリヴェルは全てを失いスラムに流れ着くがただ一人、聖女を忘れていなかった神官と再会し再び聖女の座を目指して選定の儀式へ参加することに。ところが、マリヴェルに敵意をもつ何者かの影響か彼女の選定儀式はトラブル続きで……。これは力強くも健気、泥臭くも美しい聖女マリヴェルが、ささやかな幸せを取り戻すために奮闘する物語。

■感想
聖女である少女がある日突然周囲から忘れられてしまい、再び聖女に戻る為に奮闘するお話。過酷な状況でも決して挫けずに突き進む主人公・マリヴェル、そんな明るい彼女と堅物で真面目な神官・エーレのバランスがとても良い。まるで手のかかる姉を見守る弟のようでシリアスな状況でも二人の会話で癒される。
今のところ何故エーレだけ忘却から逃れられたのか、黒幕の目的など分からないことだらけ。
神官はまだしも聖女も恋愛自由な設定は珍しいかも、安直だけどこのままエーレと結ばれてほしい。タフなマリヴェルが神官長を思い出す時だけは涙を流すのが切なすぎる…。早く皆思い出してあげてくれ。

VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた2

VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた2 (富士見ファンタジア文庫)

■あらすじ
数々のおかしなVTuberが所属する大手運営会社ライブオン。配信事故から大人気になった三期生・心音淡雪は、遂に後輩が出来るとウキウキしながら四期生発表配信を見ていたが――「私を貴殿の女にしてもらえないでありますか?」いきなり淡雪に愛の告白をする四期生が現れて!? 更に、「ゴリラさんの雑学でも話したいと思いますですよ~!」「私を甘やかしてください。なぜなら私は赤ちゃんだからです」と、残りも頭ライブオンなヤツばっかり! 挙句の果てに淡雪は『最(高の)ママ』と呼ばれることになり!? ヤバい四期生襲来!! 衝撃のVTuberコメディ第2弾!

■感想
シリーズ2冊目。第四期生を迎えたことでますます賑やかになっていくライブオン。有素の淡雪への思いが見事に変態の領域に入っていてさすがの淡雪もドン引きでしたなぁ…。還の赤ちゃん化もなかなか濃くて一部の方には需要がありそう(笑)そして唯一の良心であったシオン様が…!真面目な人程変貌すると色々と振り切っていくよね…。
淡雪とましろのほのぼのとした友情関係が可愛らしい。リアルでも仲良しとか理想じゃないですか。今回の淡雪は後輩の面倒をみたりと割と変態度控えめでしたね、その代わりに周囲が十分はっちゃけてますが。メンバーが増えてキャラの認識が追い付かなくなってきたのでこれ以上は増えないでほしい。何はともあれ次回も楽しみです。

伯爵と成金

伯爵と成金 (新潮文庫)

■あらすじ
大正情緒を引きずる昭和6年、1人の強欲成金が顔を赤いペンキで塗られた異様な死体となって発見された。冤罪を着せられた放蕩息子の牧野心太郎は、真犯人を捕まえるために、タダで探偵をするという奇特な伯爵家の次男坊・黛望(ルビ:まゆずみのぞみ)を頼る。一方、巷では同様の死体が次々見つかり、「黒影法師」なる者の仕業と噂になっていた――。耽美と退廃が匂い立つ、帝都バディミッション開幕!

■感想
成金の放蕩息子と伯爵家の次男坊が巷を騒がせる連続殺人鬼・黒影法師の謎に迫っていく。昭和初期のレトロで退廃的な雰囲気に魅せられました。バディ小説と紹介されていますが、別行動が多かったのでまだ関係性が薄いままなのが残念。序盤の心太郎の父の殺害からして回収されていない謎があってモヤモヤする…、そういう仕様なのかな。
真相は好き嫌いが別れるような気がします…。謎の組織が登場するのはワクワクしますが、メイン2人が見事に踊らされていたと思うと肩すかしな印象が否めない。感想をかくのが難しい一冊、とにかくモヤっとしました。

わたし、二番目の彼女でいいから。

わたし、二番目の彼女でいいから。 (電撃文庫)

■あらすじ
俺たちは「二番目」同士で付き合っている――危険な三角関係の行方は?「私も桐島くんのこと、二番目に好き」俺と早坂さんは互いに一番好きな人がいるのに、二番目同士で付き合っている。それでも、確かに俺と早坂さんは恋人だ。一緒に帰って、こっそり逢って、人には言えないことをする。だけど二番目はやっぱり二番目だから、もし一番好きな人と両想いになれたときは、この関係は解消する。そんな約束をしていた。そのはずだったのに――「ごめんね。私、バカだから、どんどん好きになっちゃうんだ」お互いに一番好きな人に近づけたのに、それでも俺たちはどんどん深みにはまって、歯止めがきかなくて、どうしても、お互いを手放せなくなって……。もう取り返しがつかない、100%危険で、不純で、不健全な、こじれた恋の結末は。

■感想
背徳感と不健全さがたっぷり詰まった一冊。決して実ることのない恋をしている男女がお互いを二番目に好きだったが故に付き合うことに。一番好きな人が中心な筈なのに時を重ねるごとにそれが揺らいでしまう桐島とあかね。特にあかねはそれが顕著で、心の主軸がほぼ桐島に向いている。独占欲の発揮、そして桐島と二人でいる時の暴走っぷりが背徳感たっぷりでお見事。
三角関係かと思いきや物語後半で四角関係に発展してますます面白くなっていく。桐島の一番である橘の巻き返しにあかねは消沈気味。個人的にはあかねを応援したいところ、先輩もいい奴だしな…。ぜひ決着まで見届けていきたい。

断罪された悪役令嬢は、逆行して完璧な悪女を目指す

断罪された悪役令嬢は、逆行して完璧な悪女を目指す【電子書籍限定書き下ろしSS付き】

■あらすじ
悪辣な異母妹(いもうと)に騙され、娼館へ売られた公爵令嬢・クラウディア。病死の果てに14歳の頃へと逆行した彼女は、もはや、初心でも愚かでもなかった。"健気さ"を演じて冷徹な兄を手玉にとると、"罪悪感"を餌に家庭を顧みない父親を籠絡(ろうらく)。身につけた知恵と手練手管で、学園では新入生代表を務め、生徒会入りへ。さらには意図せず、大商会の令息や王太子までも味方に! それぞれの思惑が渦巻く中、ついに学園で女同士の戦いが幕を開ける! 「大切なものを守るためなら、手段は選ばない。妹が"悪女"なら、それを超えてみせるまでですわ」 元娼婦の令嬢が「悪」で正義を貫く、痛快ラブファンタジー開幕!

■感想
悪辣な異母妹に騙されて娼館に売られてしまった主人公・クラウディア、病死の末に再び14歳に戻って人生をやり直すことに。クラウディアは娼婦時代に学んだ手管で周囲の心を掴んで信頼を得ていく。そのおかげでフェルミナの嫌がらせも通じずで、やり方が姑息な割に小者感が漂っていました。
婚約者・シルヴェスターとの恋の駆け引きが個人的に一番の見所だった。恋に慣れているようでお互い初なところが可愛らしくて応援したくなる。前世で世話になったヘレンとの絆もグッジョブ、関係性は違っていてもヘレンが幸せなら良いと思うよ。毅然としたヒロインが好きなのでサクッと読めました。

水の後宮

水の後宮 (メディアワークス文庫)

■あらすじ
後宮佳麗三千人の容疑者に、皇子の密偵が挑む。本格後宮×密偵ミステリー。入宮した姉は一年たらずで遺体となり帰ってきた――。大海を跨ぐ大商人を夢見て育った商家の娘・水鏡。しかし後宮へ招集された姉の美しすぎる死が、水鏡と陰謀うずまく後宮を結びつける。宮中の疑義を探る皇太弟・文青と交渉し、姉と同じく宮女となった水鏡。大河に浮かぶ後宮で、表の顔は舟の漕手として、裏の顔は文青の密偵として。持ち前の商才と観察眼を活かし、水面が映す真相に舟を漕ぎ寄せる。水に浮かぶ清らかな後宮の、清らかでないミステリー。

■感想
後宮で亡くなった姉の死の真相を突き止める為に皇太弟・文青の密偵として後宮で働くことに。大河に浮かぶ後宮、とだけあって情景描写が綺麗。宮女の命は軽く扱われる、という過酷な環境の中で様々な人間の思惑が交錯して事件を複雑にしていく。そんな中でも水鏡を妹のように気にかける狸才人や堅物で真面目な黄宮調など水鏡に寄り添う人間が優しい人達で良かった。
皇子・文青との色づき始めた恋も気になるところ。自分の店を大きくしたい、という夢を持つ水鏡のことを考えて自分の好意に蓋をしている文青さんマジでイケメンです。水鏡にとって綺麗で優しい姉だった水蓮の本当の姿、事件の黒幕などまだ未解決なので続編希望です。