さくら、うるわし 左近の桜(★★★★☆)

さくら、うるわし 左近の桜

さくら、うるわし 左近の桜

男同士が忍び逢う宿屋「左近」の長男、桜蔵(さくら)は高校を卒業し、大学に進学。それを機に実家をはなれ、父の柾とその正妻と同居することになる。しかし、やっかいなものを拾う”体質”は、そのままで…… 。大雨の朝、自転車通学の途中で事故にあい、迷いこんだ先は古着を仕立て直すという〈江間衣服縫製所〉。その主の婆さんは着ていた服で浮き世の罪の重さをはかり、つぎに渡る川や行き先を決めるという――この世ならざる古着屋や巡査との出逢い、境界をまたいで往き来する桜蔵の命運やいかに――!?(この川、渡るべからず) 匂いたつかぐわしさにほろ酔う、大人のための連作奇譚集。
シリーズ3冊目。待ちに待った久しぶりの新巻ということで楽しみにしていました。前回は桜蔵の大学進学に伴い、征との同居が決まったところで終了。桜蔵は一応認知はされてるものの征の正妻の子ではありません。普通はギスギスした雰囲気が漂うものですが、むしろ正妻と仲が良いとか長野さんの作品らしいなと思います。
今回も事あるごとに桜蔵が「女」扱いされ、揉め事に巻き込まれていきます。個人的には「この川、渡るべからず」が面白かったなと。あの世の狭間の描写が興味深かったです。それにしても征は罪な男ですね〜。桜蔵と関係が進展するのかと思いきやあくまで親子のまま。桜蔵の本当の父親と実はそういう関係だったんじゃないかと邪推してしまう。ぜひ続きをお願いします。